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 作品 

   
         
   

はじめてやさしくなれたのは、いつですか? たとえば、シャオツーの場合は、エリサとおばあちゃんがいた石碇(シーディン)の夏がそうでした。

 台北からスクーターを飛ばせば30分。緑まぶしい山の中、川辺にたたずむちいさな古ぼけた田舎街が、僕の故郷・石碇(シーディン)だ。せせらぎが響くこの街で、僕は2人の女性とひと夏を過ごした。ひとりは、あたたかくもおせっかいなおばあちゃん。もうひとりは、異邦人の年上の女性、エリサだ。
 振り返れば、すべては夢のようにおぼろげな出来事。おばあちゃんへのちょっとした苛立ち、彼女への淡い憧れ。未来へのかすかな戸惑いや、わきあがる想いを言葉にできないもどかしさ。やがて、ゆっくりと深まる3人の絆。しかし、石碇の空気は、あきらかに変わりつつあった。そして、静かに訪れる彼女との別れ――。
 どんなにそのままでいたくても、季節は変わってしまう。けれども、あの夏、僕は、はじめてやさしくなれたかもしれない――。

   
             
    急いでばかりの毎日だけれども、たまには立ち止まって、ゆっくりと身の回りを見つめてよう。だれかを傷つけていたことに、はっとするかもしれない。

 『シーディンの夏』が差し出すのは、暮らしの中のありふれた情景。あざやかな夏の緑や、気まぐれな通り雨。ぎこちなくも、ぬくもりあふれる3人で囲む食卓。「のんびり歩こうよ、焦らなくて大丈夫」。消えつつある石碇のゆるやかな空気は、シャオツーにそうささやく。急ごうとしていたシャオツーは、すこしずつ身の回りを見つめなおす。そして、おばあちゃんを傷つけていたことや、エリサの涙に隠されたさびしさに気がついた。
 忙しい毎日。たまには立ち止まって、ゆっくりと身の回りを見つめたくなる作品が台湾から届きました。映画を見た帰り道、夜空を見上げてみよう。きっと、ちいさな星たちが、あなたにほほ笑みかけているから。疲れたこころが軽くなり、忘れていた大切なことを思い出せるかもしれません。たとえば、はじめてやさしくなれた日のことを――。
   
             
    夜空に天燈が舞い上がる、はかなくもうつくしいラストシーン。揺れるこころをていねいにすくいあげたのは、弱冠25歳のチェン・ヨウチェー監督。彼は、失われていくうつくしさを残すためにカメラを回した。

 チェン・ヨウチェー監督は、弱冠25歳。今年大学を卒業し、9月から兵役に就く。2作目の本作は、台湾金馬奨最優秀短篇映画賞を受賞、昨年の東京国際映画祭「アジアの風」部門に、短篇ながら正式招待。彼は、石碇の失われていくうつくしさをフィルムに残すためにカメラを回した。シャオツーに刻み込まれたのは、若い彼自身のかけがえのない時間。いつくしむようなまなざしで、揺れるこころをていねいにすくいあげていった。
 撮影監督チャン・チャンは、『恐怖分子』(エドワード・ヤン監督)、『最愛の夏』(チャン・ツォーチ監督)などに参加したベテラン・カメラマン。音楽監督に初挑戦したのは、Nathalie Wiseでも活躍する今年デビュー15周年の高野寛。Nathalie Wiseの音楽が、シャオツーを見守るようにやさしく響く。天燈が舞い上がり、映像と音楽が幸福な調和を奏でるラストシーン。はかなくも忘れがたいうつくしさは、いつまでも胸の奥をほのかに灯しつづけるだろう。

   
             
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「シーディンの夏」と、エンディングテーマ曲「美しい星」は違う場所で違う時に作られていた二つの作品でしたが、映像と音が重なった瞬間に、まるで初めから予定されていたように一つの同じイメージを結びました。それは幸福な出会いであり、特別な縁だったと思います。

もう何度もこの映画を観ているのですが、その度に監督が随所にいろいろな仕掛けをしていることに気がつきます。繰り返し楽しめる味わい深さ、いつかみた景色のような懐かしさ、そして初々しさ。時を忘れ、語りかけるような映像に身を任せた後には、いつもあたたかく切ない余韻に包まれて席を立つのです。

音楽監督:高野寛さんより

にげない日常の風景が、天橙とともに静かな感動を与えてくれた。

野宮真貴さん(ミュージシャン)より

かな時間の流れの中で、しっかりと人間が描かれていて、観ているこちらもそこで暮らしている様な気になる。だからエンディングをむかえるときには、もう終わりだと思うと同時に、送ってもいない自分の季節の終わりを感じる。

BIKKE(ミュージシャン)より

     
     

◆◆◆

     
             
     


僕の故郷、台湾以外で一番親しみを感じる国、

日本で上映できて、とても光栄です。

この作品は、「石碇(シーディン)」という台湾の小さな田舎町で

撮影したのですが、その美しさと、ささやかな出来事から生まれてくる

感動をみなさまに伝えられたら、とてもうれしいです。

鄭有傑 チェン・ヨウチェー 監督 より

     
             
   

■監督/脚本:鄭有傑 チェン・ヨウチェー

■製作:李志鴻 リー・ツーホン
■撮影監督:張展 チャン・チャン ■撮影:葉斯光 イエ・スークアン
■編集:陳曉東 チェン・シャオトン ■録音:周震 チュウ・チェン

■音楽監督:高野 寛  ■楽曲提供:Nathalie Wise(BIKKE/高野寛/斉藤哲也)、undercurrent

■出演:黄健[王韋] ファン・チェンウェイ
Manon Garceau マノン・ガルソー/李秀 リー・ショウ
謝俊慧 シェー・チュンフェイ/李烈 リー・リェー〔友情出演〕
戴立忍 ダイ・リーレン〔友情出演〕

■原題:石碇的夏天/summer, dream
(2001年/台湾/16mm/カラー/1:1.33/60分)

■特別協力:FIVE-D ■協力:中国茶専家 遊茶

■配給:あかり屋+スローラーナー

   
             
             
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